関連法規 

土砂災害防止法  (土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律) 


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平成十二年法律第五十七号
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限し、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めるほか、土砂災害の急迫した危険がある場合において避難に資する情報を提供すること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「土砂災害」とは、急傾斜地の崩壊(傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象をいう。)、土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象をいう。第二十七条第二項及び第二十八条第一項において同じ。)若しくは地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象をいう。同項において同じ。)(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する。)又は河道閉塞によるたん水(土石等が河道を閉塞したことによって水がたまる自然現象をいう。第七条第一項及び第二十八条第一項において同じ。)を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害をいう。
第二章 土砂災害防止対策基本指針等
(土砂災害防止対策基本指針)
第三条 国土交通大臣は、土砂災害の防止のための対策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関する基本的な事項
二 次条第一項の基礎調査の実施について指針となるべき事項
三 第七条第一項の規定による土砂災害警戒区域の指定及び第九条第一項の規定による土砂災害特別警戒区域の指定について指針となるべき事項
四 第九条第一項の土砂災害特別警戒区域内の建築物の移転その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関し指針となるべき事項
五 第二十七条第一項の規定による危険降雨量の設定並びに同項の規定による土砂災害警戒情報の通知及び周知のための必要な措置について指針となるべき事項
六 第二十八条第一項及び第二十九条第一項の緊急調査の実施並びに第三十一条第一項の規定による土砂災害緊急情報の通知及び周知のための必要な措置について指針となるべき事項
3 国土交通大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び農林水産大臣に協議するとともに、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。
4 国土交通大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(基礎調査)
第四条 都道府県は、基本指針に基づき、おおむね五年ごとに、第七条第一項の規定による土砂災害警戒区域の指定及び第九条第一項の規定による土砂災害特別警戒区域の指定その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況その他の事項に関する調査(以下「基礎調査」という。)を行うものとする。
2 都道府県は、基礎調査の結果を、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に通知するとともに、公表しなければならない。
3 国土交通大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、都道府県に対し、基礎調査の結果について必要な報告を求めることができる。
(基礎調査のための土地の立入り等)
第五条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、基礎調査のためにやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。
3 第一項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
5 第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見を聴かなければならない。
7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
8 都道府県は、第一項の規定による立入り又は一時使用により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
9 前項の規定による損失の補償については、都道府県と損失を受けた者とが協議しなければならない。
10 前項の規定による協議が成立しない場合においては、都道府県は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服のある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
(基礎調査に関する是正の要求の方式)
第六条 国土交通大臣は、都道府県の基礎調査に関する事務の処理が法令の規定に違反している場合又は科学的知見に基づかずに行われている場合において、当該基礎調査の結果によったのでは次条第一項の規定による土砂災害警戒区域の指定又は第九条第一項の規定による土砂災害特別警戒区域の指定が著しく適正を欠くこととなり、住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあることが明らかであるとして地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の五第一項の規定による求めを行うときは、当該都道府県が講ずべき措置の内容を示して行うものとする。
第三章 土砂災害警戒区域
(土砂災害警戒区域)
第七条 都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における土砂災害(河道閉塞による湛水を発生原因とするものを除く。以下この章、次章及び第二十七条において同じ。)を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域及びその発生原因となる自然現象の種類を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域及び土砂災害の発生原因となる自然現象の種類を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。
6 前三項の規定は、指定の解除について準用する。
(警戒避難体制の整備等)
第八条 市町村防災会議(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第十六条第一項の市町村防災会議をいい、これを設置しない市町村にあっては、当該市町村の長とする。次項において同じ。)は、前条第一項の規定による警戒区域の指定があったときは、市町村地域防災計画(同法第四十二条第一項の市町村地域防災計画をいう。以下同じ。)において、当該警戒区域ごとに、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 土砂災害に関する情報の収集及び伝達並びに予報又は警報の発令及び伝達に関する事項
二 避難施設その他の避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項
三 災害対策基本法第四十八条第一項の防災訓練として市町村長が行う土砂災害に係る避難訓練の実施に関する事項
四 警戒区域内に、要配慮者利用施設(社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を要する者が利用する施設をいう。以下同じ。)であって、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における当該要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難を確保する必要があると認められるものがある場合にあっては、当該要配慮者利用施設の名称及び所在地
五 救助に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、警戒区域における土砂災害を防止するために必要な警戒避難体制に関する事項
2 市町村防災会議は、前項の規定により市町村地域防災計画において同項第四号に掲げる事項を定めるときは、当該市町村地域防災計画において、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、同項第一号に掲げる事項として土砂災害に関する情報、予報及び警報の伝達に関する事項を定めるものとする。
3 警戒区域をその区域に含む市町村の長は、市町村地域防災計画に基づき、国土交通省令で定めるところにより、土砂災害に関する情報の伝達方法、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における避難施設その他の避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項その他警戒区域における円滑な警戒避難を確保する上で必要な事項を住民等に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布その他の必要な措置を講じなければならない。
(要配慮者利用施設の利用者の避難の確保のための措置に関する計画の作成等)
第八条の二 前条第一項の規定により市町村地域防災計画にその名称及び所在地を定められた要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、国土交通省令で定めるところにより、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における当該要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な訓練その他の措置に関する計画を作成しなければならない。
2 前項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、同項の規定による計画を作成したときは、遅滞なく、これを市町村長に報告しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
3 市町村長は、第一項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者が同項に規定する計画を作成していない場合において、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における当該要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るため必要があると認めるときは、当該要配慮者利用施設の所有者又は管理者に対し、必要な指示をすることができる。
4 市町村長は、前項の規定による指示を受けた第一項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者が、正当な理由がなく、その指示に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
5 第一項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、同項に規定する計画で定めるところにより、急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における同項の要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難の確保のための訓練を行わなければならない。
第四章 土砂災害特別警戒区域
(土砂災害特別警戒区域)
第九条 都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域並びにその発生原因となる自然現象の種類及び当該自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項(土砂災害の発生を防止するために行う建築物の構造の規制に必要な事項として政令で定めるものに限る。)を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域、土砂災害の発生原因となる自然現象の種類及び第二項の政令で定める事項を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。
6 指定は、第四項の規定による公示によってその効力を生ずる。
7 関係のある市町村の長は、第五項の図書を当該市町村の事務所において、一般の縦覧に供しなければならない。
8 都道府県知事は、土砂災害の防止に関する工事の実施等により、特別警戒区域の全部又は一部について指定の事由がなくなったと認めるときは、当該特別警戒区域の全部又は一部について指定を解除するものとする。
9 第三項から第六項までの規定は、前項の規定による解除について準用する。
(特定開発行為の制限)
第十条 特別警戒区域内において、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第十二項に規定する開発行為で当該開発行為をする土地の区域内において建築が予定されている建築物(当該区域が特別警戒区域の内外にわたる場合においては、特別警戒区域外において建築が予定されている建築物を除く。以下「予定建築物」という。)の用途が制限用途であるもの(以下「特定開発行為」という。)をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為その他の政令で定める行為については、この限りでない。
2 前項の制限用途とは、予定建築物の用途で、住宅(自己の居住の用に供するものを除く。)並びに高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設(政令で定めるものに限る。)以外の用途でないものをいう。
(申請の手続)
第十一条 前条第一項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
一 特定開発行為をする土地の区域(第十四条第二項及び第十九条において「開発区域」という。)の位置、区域及び規模
二 予定建築物(前条第一項の制限用途のものに限る。以下「特定予定建築物」という。)の用途及びその敷地の位置
三 特定予定建築物における土砂災害を防止するため自ら施行しようとする工事(次号において「対策工事」という。)の計画
四 対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画
五 その他国土交通省令で定める事項
2 前項の申請書には、国土交通省令で定める図書を添付しなければならない。
(許可の基準)
第十二条 都道府県知事は、第十条第一項の許可の申請があったときは、前条第一項第三号及び第四号に規定する工事(以下「対策工事等」という。)の計画が、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な措置を政令で定める技術的基準に従い講じたものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。
(許可の条件)
第十三条 都道府県知事は、第十条第一項の許可に、対策工事等の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる。
(既着手の場合の届出等)
第十四条 第九条第一項の規定による特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に特定開発行為(第十条第一項ただし書の政令で定める行為を除く。)に着手している者は、その指定の日から起算して二十一日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による届出があった場合において、当該届出に係る開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)における土砂災害を防止するために必要があると認めるときは、当該届出をした者に対して、予定建築物の用途の変更その他の必要な助言又は勧告をすることができる。
(許可の特例)
第十五条 国又は地方公共団体が行う特定開発行為については、国又は地方公共団体と都道府県知事との協議が成立することをもって第十条第一項の許可を受けたものとみなす。
(許可又は不許可の通知)
第十六条 都道府県知事は、第十条第一項の許可の申請があったときは、遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない。
2 前項の処分をするには、文書をもって当該申請をした者に通知しなければならない。
(変更の許可等)
第十七条 第十条第一項の許可(この項の規定による許可を含む。)を受けた者は、第十一条第一項第二号から第四号までに掲げる事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、変更後の予定建築物の用途が第十条第一項の制限用途以外のものであるとき、又は国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。
2 前項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
3 第十条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書に該当する変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
4 第十二条、第十三条及び前二条の規定は、第一項の許可について準用する。
5 第一項の許可又は第三項の規定による届出の場合における次条から第二十条までの規定の適用については、第一項の許可又は第三項の規定による届出に係る変更後の内容を第十条第一項の許可の内容とみなす。
(工事完了の検査等)
第十八条 第十条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等の全てを完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、当該対策工事等が第十二条の政令で定める技術的基準に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該対策工事等が当該政令で定める技術的基準に適合していると認めたときは、国土交通省令で定める様式の検査済証を当該届出をした者に交付しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定により検査済証を交付したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該対策工事等が完了した旨を公告しなければならない。
(建築制限)
第十九条 第十条第一項の許可を受けた開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)内の土地においては、前条第三項の規定による公告があるまでの間は、第十条第一項の制限用途の建築物を建築してはならない。
(特定開発行為の廃止)
第二十条 第十条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等を廃止したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(監督処分)
第二十一条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な限度において、第十条第一項若しくは第十七条第一項の許可を取り消し、若しくはその許可に付した条件を変更し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。
一 第十条第一項又は第十七条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第十条第一項又は第十七条第一項の許可に付した条件に違反した者
三 特別警戒区域で行われる又は行われた特定開発行為(当該特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に着手している行為を除く。)であって、特定予定建築物の土砂災害を防止するために必要な措置を第十二条の政令で定める技術的基準に従って講じていないものに関する工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)又は請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者
四 詐欺その他不正な手段により第十条第一項又は第十七条第一項の許可を受けた者
2 前項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該措置を行うべき旨及びその期限までに当該措置を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該措置を行う旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
4 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、同項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
(立入検査)
第二十二条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、第十条第一項、第十七条第一項、第十八条第二項、第十九条又は前条第一項の規定による権限を行うため必要がある場合においては、当該土地に立ち入り、当該土地又は当該土地において行われている対策工事等の状況を検査することができる。
2 第五条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(報告の徴収等)
第二十三条 都道府県知事は、第十条第一項又は第十七条第一項の許可を受けた者に対し、当該許可に係る土地若しくは当該許可に係る対策工事等の状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は当該土地における土砂災害を防止するために必要な助言若しくは勧告をすることができる。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造耐力に関する基準)
第二十四条 特別警戒区域における土砂災害の発生を防止するため、建築基準法第二十条第一項に基づく政令においては、居室を有する建築物の構造が当該土砂災害の発生原因となる自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に対して安全なものとなるよう建築物の構造耐力に関する基準を定めるものとする。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物に対する建築基準法の適用)
第二十五条 特別警戒区域(建築基準法第六条第一項第四号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物(同項第一号から第三号までに掲げるものを除く。)については、同項第四号の規定に基づき都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内における建築物とみなして、同法第六条から第七条の五まで、第十八条、第八十九条、第九十一条及び第九十三条の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
(移転等の勧告)
第二十六条 都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には特別警戒区域内に存する居室を有する建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、当該建築物の移転その他土砂災害を防止し、又は軽減するために必要な措置をとることを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地の取得についてのあっせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第五章 避難に資する情報の提供等
(土砂災害警戒情報の提供)
第二十七条 都道府県知事は、基本指針に基づき、当該都道府県の区域を分けて定める区域ごとに、土砂災害の急迫した危険が予想される降雨量(以下この条において「危険降雨量」という。)を設定し、当該区域に係る降雨量が危険降雨量に達したときは、災害対策基本法第六十条第一項の規定による避難のための立退きの勧告又は指示の判断に資するため、土砂災害の発生を警戒すべき旨の情報(次項において「土砂災害警戒情報」という。)を関係のある市町村の長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置を講じなければならない。
2 前項の規定による土砂災害警戒情報の通知及び周知のための必要な措置は、その区域に係る降雨量が危険降雨量に達した区域(以下この項において「危険降雨量区域」という。)のほか、その周辺の区域のうち土砂災害が発生するおそれがあると認められるもの(危険降雨量区域において土石流が発生した場合には、当該土石流が到達し、土砂災害が発生するおそれがあると認められる区域を含む。)を明らかにしてするものとする。
(都道府県知事が行う緊急調査)
第二十八条 都道府県知事は、土石流、地滑り又は河道閉塞による湛水を発生原因とする重大な土砂災害の急迫した危険が予想されるものとして政令で定める状況があると認めるときは、基本指針に基づき、これらの自然現象を発生原因とする重大な土砂災害が想定される土地の区域及び時期を明らかにするため必要な調査(以下「緊急調査」という。)を行うものとする。ただし、次条第一項の規定により国土交通大臣が緊急調査を行う場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、緊急調査の結果、基本指針に基づき、前項の重大な土砂災害の危険がないと認めるとき、又はその危険が急迫したものでないと認めるときは、当該緊急調査を終了することができる。
(国土交通大臣が行う緊急調査)
第二十九条 国土交通大臣は、前条第一項の政令で定める状況があると認める場合であって、当該土砂災害の発生原因である自然現象が緊急調査を行うために特に高度な専門的知識及び技術を要するものとして政令で定めるものであるときは、基本指針に基づき、緊急調査を行うものとする。
2 国土交通大臣は、前項の規定により緊急調査を行おうとするときは、あらかじめ、緊急調査を行おうとする土地の区域を管轄する都道府県知事にその旨を通知しなければならない。次項において準用する前条第二項の規定により緊急調査を終了しようとするときも、同様とする。
3 前条第二項の規定は、国土交通大臣が行う緊急調査について準用する。
(緊急調査のための土地の立入り等)
第三十条 都道府県知事若しくは国土交通大臣又はこれらの命じた者若しくは委任した者は、緊急調査のためにやむを得ない必要があるときは、これらの必要な限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。
2 第五条(第一項及び第四項を除く。)の規定は、前項の規定による立入り及び一時使用について準用する。この場合において、同条第八項から第十項までの規定中「都道府県」とあるのは、「都道府県又は国」と読み替えるものとする。
(土砂災害緊急情報の通知及び周知等)
第三十一条 都道府県知事又は国土交通大臣は、緊急調査の結果、基本指針に基づき、第二十八条第一項に規定する自然現象の発生により一定の土地の区域において重大な土砂災害の急迫した危険があると認めるとき、又は当該土砂災害が想定される土地の区域若しくは時期が明らかに変化したと認めるときは、災害対策基本法第六十条第一項及び第六項の規定による避難のための立退きの勧告又は指示の判断に資するため、当該緊急調査により得られた当該土砂災害が想定される土地の区域及び時期に関する情報(次項において「土砂災害緊急情報」という。)を、都道府県知事にあっては関係のある市町村の長に、国土交通大臣にあっては関係のある都道府県及び市町村の長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置を講じなければならない。
2 都道府県知事又は国土交通大臣は、土砂災害緊急情報のほか、緊急調査により得られた情報を、都道府県知事にあっては関係のある市町村の長に、国土交通大臣にあっては関係のある都道府県及び市町村の長に随時提供するよう努めるものとする。
(避難のための立退きの指示等の解除に関する助言)
第三十二条 市町村長は、災害対策基本法第六十条第一項の規定による避難のための立退きの勧告又は指示(土砂災害が発生し、又は発生するおそれがある場合におけるものに限る。)を解除しようとする場合において、必要があると認めるときは、国土交通大臣又は都道府県知事に対し、当該解除に関する事項について、助言を求めることができる。この場合において、助言を求められた国土交通大臣又は都道府県知事は、必要な助言をするものとする。
第六章 雑則
(費用の補助)
第三十三条 国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、基礎調査に要する費用の一部を補助することができる。
(資金の確保等)
第三十四条 国及び都道府県は、第二十六条第一項の規定による勧告に基づく建築物の移転等が円滑に行われるために必要な資金の確保、融通又はそのあっせんに努めるものとする。
(緊急時の指示)
第三十五条 国土交通大臣は、土砂災害が発生し、又は発生するおそれがあると認められる場合において、土砂災害を防止し、又は軽減するため緊急の必要があると認められるときは、都道府県知事に対し、この法律の規定により都道府県知事が行う事務のうち政令で定めるものに関し、必要な指示をすることができる。
(地方公共団体への援助)
第三十六条 国土交通大臣は、第三十一条第二項に規定するもののほか、第七条第一項の規定による警戒区域の指定及び第九条第一項の規定による特別警戒区域の指定その他この法律に基づく都道府県及び市町村が行う事務が適正かつ円滑に行われるよう、都道府県及び市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行うよう努めなければならない。
(権限の委任)
第三十七条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。
第七章 罰則
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第十条第一項又は第十七条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第十九条の規定に違反して、第十条第一項の制限用途の建築物を建築した者
三 第二十一条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者
第三十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第七項(第三十条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、土地の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者
二 第二十二条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第四十条 第二十三条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第四十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第四十二条 第十四条第一項、第十七条第三項又は第二十条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。

附則(省略)



   土砂災害防止法施行令

平成十三年政令第八十四号
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行令

内閣は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)第五条第十項、第六条第一項、第八条第一項及び第二項、第九条第一項ただし書及び第二項、第十一条、第二十六条並びに第二十八条の規定に基づき、この政令を制定する。
(収用委員会の裁決の申請手続)
第一条 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「法」という。)第五条第十項の規定により土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請しようとする者は、国土交通省令で定める様式に従い、同条第三項各号(第三号を除く。)に掲げる事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければならない。
土砂災害警戒区域の指定の基準
第二条 法第七条第一項の政令で定める基準は、次の各号に掲げる土砂災害の発生原因となる自然現象の区分に応じ、当該各号に定める土地の区域であることとする。
一 急傾斜地の崩壊 次に掲げる土地の区域
イ 急傾斜地(傾斜度が三十度以上である土地の区域であって、高さが五メートル以上のものに限る。以下同じ。)
ロ 次に掲げる土地の区域のうちイの急傾斜地の上端と下端の右端の点を通る鉛直面と左端の点を通る鉛直面で挟まれる土地の区域
(1) イの急傾斜地の上端に隣接する急傾斜地以外の土地の区域であって、当該上端からの水平距離が十メートル以内のもの
(2) イの急傾斜地の下端に隣接する急傾斜地以外の土地の区域であって、当該下端からの水平距離が当該急傾斜地の高さに相当する距離の二倍(当該距離の二倍が五十メートルを超える場合にあっては、五十メートル)以内のもの(急傾斜地の崩壊が発生した場合において、地形の状況により明らかに土石等が到達しないと認められる土地の区域を除く。)
二 土石流 その流水が山麓における扇状の地形の地域に流入する地点より上流の部分の勾配が急な河川(当該上流の流域面積が五平方キロメートル以下であるものに限る。第七条第四号ハにおいて「渓流」という。)のうち当該地点より下流の部分及び当該下流の部分に隣接する一定の土地の区域であって、国土交通大臣が定める方法により計測した土地の勾配が二度以上のもの(土石流が発生した場合において、地形の状況により明らかに土石流が到達しないと認められる土地の区域を除く。)
三 地滑り 次に掲げる土地の区域
イ 地滑り区域(地滑りしている区域又は地滑りするおそれのある区域をいう。以下同じ。)
ロ イの地滑り区域に隣接する一定の土地の区域であって、当該地滑り区域及び当該一定の土地の区域を投影した水平面上において、当該一定の土地の区域の投影が、当該地滑り区域の境界線の投影(以下この号において「境界線投影」という。)のうち当該境界線投影と地滑り方向(当該地滑り区域に係る地滑り地塊が滑る場合に当該水平面上において当該地滑り地塊の投影が移動する方向をいう。以下この号及び次条第三号ロにおいて同じ。)に平行な当該水平面上の二本の直線との接点を結ぶ部分で地滑り方向にあるもの(同号ロにおいて「特定境界線投影」という。)を、当該境界線投影に接する地滑り方向と直交する当該水平面上の二本の直線間の距離(当該距離が二百五十メートルを超える場合にあっては、二百五十メートル)だけ当該水平面上において地滑り方向に平行に移動したときにできる軌跡に一致する土地の区域(地滑りが発生した場合において、地形の状況により明らかに地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等が到達しないと認められる土地の区域を除く。)
(土砂災害特別警戒区域の指定の基準)
第三条 法第九条第一項の政令で定める基準は、次の各号に掲げる土砂災害の発生原因となる自然現象の区分に応じ、当該各号に定める土地の区域であることとする。
一 急傾斜地の崩壊 次に掲げる土地の区域
イ その土地の区域内に建築物が存するとした場合に急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動により当該建築物の地上部分に作用すると想定される力の大きさ(当該急傾斜地の高さ及び傾斜度、当該急傾斜地の下端から当該建築物までの水平距離等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)が、通常の居室を有する建築物(以下この条において「通常の建築物」という。)が土石等の移動に対して住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある損壊を生ずることなく耐えることのできる力の大きさ(当該急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動により力が当該通常の建築物の地上部分に作用する場合の土石等の高さに応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)を上回る土地の区域
ロ その土地の区域内に建築物が存するとした場合に急傾斜地の崩壊に伴う土石等の堆積により当該建築物の地上部分に作用すると想定される力の大きさ(当該急傾斜地の高さ及び傾斜度、当該急傾斜地の下端から当該建築物までの水平距離等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)が、通常の建築物が土石等の堆積に対して住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある損壊を生ずることなく耐えることのできる力の大きさ(当該急傾斜地の崩壊に伴う土石等の堆積により力が当該通常の建築物の地上部分に作用する場合の土石等の高さに応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)を上回る土地の区域
二 土石流 その土地の区域内に建築物が存するとした場合に土石流により当該建築物に作用すると想定される力の大きさ(当該土石流により流下する土石等の量、土地の勾配等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)が、通常の建築物が土石流に対して住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある損壊を生ずることなく耐えることのできる力の大きさ(当該土石流により力が当該通常の建築物に作用する場合の土石流の高さに応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)を上回る土地の区域
三 地滑り 次の要件を満たす土地の区域
イ その土地の区域内に建築物が存するとした場合に地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等の移動により力が当該建築物に作用した時から三十分間が経過した時において当該建築物に作用すると想定される力の大きさ(当該地滑り地塊の規模等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)が、通常の建築物が土石等の移動に対して住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある損壊を生ずることなく耐えることのできる力の大きさ(当該地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等の移動により力が当該通常の建築物に作用する場合の土石等の高さに応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)を上回る土地の区域であること。
ロ 地滑り区域に隣接する一定の土地の区域であって、当該地滑り区域及び一定の土地の区域を投影した水平面上において、当該一定の土地の区域の投影の全てが、特定境界線投影を当該水平面上において地滑り方向に六十メートル平行に移動したときにできる軌跡の範囲内にあるものであること。
(建築物の構造の規制に必要な衝撃に関する事項)
第四条 法第九条第二項の政令で定める衝撃に関する事項は、次の各号に掲げる土砂災害の発生原因となる自然現象の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。
一 急傾斜地の崩壊 イに掲げる区域の区分並びに当該区域の区分ごとに定めるロ及びハに掲げる事項
イ 土砂災害特別警戒区域について、急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積により建築物の地上部分に作用すると想定される力の大きさを考慮して国土交通大臣が定める方法により、行う区域の区分
ロ イの定めるところにより区分された区域内に建築物が存するとした場合に急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動により当該建築物の地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさ(当該急傾斜地の高さ及び傾斜度、当該急傾斜地の下端から当該建築物までの水平距離等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)のうち最大のもの及び当該力が当該建築物に作用する場合の土石等の高さ
ハ イの定めるところにより区分された区域内に建築物が存するとした場合に急傾斜地の崩壊に伴う土石等の堆積により当該建築物の地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさ(当該急傾斜地の高さ及び傾斜度、当該急傾斜地の下端から当該建築物までの水平距離等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)のうち最大のもの及び当該力が当該建築物に作用する場合の土石等の高さ
二 土石流 イに掲げる区域の区分及び当該区域の区分ごとに定めるロに掲げる事項
イ 土砂災害特別警戒区域について、土石流により建築物に作用すると想定される力の大きさを考慮して国土交通大臣が定める方法により、行う区域の区分
ロ イの定めるところにより区分された区域内に建築物が存するとした場合に土石流により当該建築物の地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさ(当該土石流により流下する土石等の量、土地の勾配等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)のうち最大のもの及び当該力が当該建築物に作用する場合の土石流の高さ
三 地滑り 土砂災害特別警戒区域内に建築物が存するとした場合に地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等の移動により力が当該建築物に作用した時から三十分間が経過した時において当該建築物の地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさ(当該地滑り地塊の規模等に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値とする。)及び当該力が当該建築物に作用する場合の土石等の高さ
(特定開発行為の制限の適用除外)
第五条 法第十条第一項ただし書の政令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一 非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為
二 仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
(制限用途)
第六条 法第十条第二項の政令で定める社会福祉施設、学校及び医療施設は、次に掲げるものとする。
一 老人福祉施設(老人介護支援センターを除く。)、有料老人ホーム、身体障害者社会参加支援施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム、障害福祉サービス事業(生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)の用に供する施設、保護施設(医療保護施設及び宿所提供施設を除く。)、児童福祉施設(児童自立支援施設を除く。)、障害児通所支援事業(児童発達支援又は放課後等デイサービスを行う事業に限る。)の用に供する施設、母子・父子福祉施設、母子健康包括支援センターその他これらに類する施設
二 特別支援学校及び幼稚園
三 病院、診療所及び助産所
(対策工事等の計画の技術的基準)
第七条 法第十二条の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
一 対策工事の計画は、対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画と相まって、特定予定建築物における土砂災害を防止するものであるとともに、開発区域及びその周辺の地域における土砂災害の発生のおそれを大きくすることのないものであること。
二 対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画は、対策工事の計画と相まって、開発区域及びその周辺の地域における土砂災害の発生のおそれを大きくすることのないものであること。
三 土砂災害の発生原因が急傾斜地の崩壊である場合にあっては、対策工事の計画は、急傾斜地の崩壊により生ずる土石等を特定予定建築物の敷地に到達させることのないよう、次のイからハまでに掲げる工事又は施設の設置の全部又は一部を当該イからハまでに定める基準に従い行うものであること。
イ のり切 地形、地質等の状況を考慮して、急傾斜地の崩壊を助長し、又は誘発することのないように施行すること。
ロ 急傾斜地の全部又は一部の崩壊を防止するための施設 次の(1)から(3)までに掲げる施設の種類の区分に応じ、当該(1)から(3)までに定める基準に適合するものであること。
(1) 土留 のり面の崩壊を防止し、土圧、水圧及び自重によって損壊、転倒、滑動又は沈下をせず、かつ、その裏面の排水に必要な水抜穴を有する構造であること。
(2) のり面を保護するための施設 石張り、芝張り、モルタルの吹付け等によりのり面を風化その他の侵食に対して保護する構造であること。
(3) 排水施設 その浸透又は停滞により急傾斜地の崩壊の原因となる地表水及び地下水を急傾斜地から速やかに排除することができる構造であること。
ハ 急傾斜地の崩壊が発生した場合に生じた土石等を堆積するための施設 土圧、水圧、自重及び土石等の移動又は堆積により当該施設に作用する力によって損壊、転倒、滑動又は沈下をしない構造であること。
四 土砂災害の発生原因が土石流である場合にあっては、対策工事の計画は、土石流を特定予定建築物の敷地に到達させることのないよう、次のイからニまでに掲げる施設の設置の全部又は一部を当該イからニまでに定める基準に従い行うものであること。
イ 山腹工 山腹の表層の風化その他の侵食を防止すること等により当該山腹の安定性を向上する機能を有する構造であること。
ロ えん堤 土石流により流下する土石等を堆積することにより渓床を安定する機能を有し、かつ、土圧、水圧、自重及び土石流により当該えん堤に作用する力によって損壊、転倒、滑動又は沈下をしない構造であること。
ハ 床固 渓流の土石等の移動を防止することにより渓床を安定する機能を有し、かつ、土圧、水圧、自重及び土石流により当該床固に作用する力によって損壊、転倒、滑動又は沈下をしない構造であること。
ニ 土石流を開発区域外に導流するための施設 その断面及び勾配が当該施設を設置する地点において流下する土石流を開発区域外に安全に導流することができる構造であること。
五 土砂災害の発生原因が地滑りである場合にあっては、対策工事の計画は、地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等を特定予定建築物の敷地に到達させることのないよう、次のイからヘまでに掲げる工事又は施設の設置の全部又は一部を当該イからヘまでに定める基準に従い行うものであること。
イ 地滑り地塊の除去 地形、地質等の状況を考慮して、地滑りを助長し、又は誘発することのないように施行し、かつ、地滑り地塊の除去により形成されたのり面を安定するように施行すること。
ロ 水流の付替え 地形、地質、流水等の状況を考慮して、流水が速やかに流下するように施行すること。
ハ 排水施設 地滑りの原因となる地表水及び地下水を地滑り区域から速やかに排除することができる構造であること。
ニ 土留及びくい 地滑り力に対して安全な構造であること。
ホ ダム、床固、護岸、導流堤及び水制 地滑り地塊を安定させている土地を流水による浸食に対して保護する構造であること。
ヘ 地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等を堆積するための施設 土圧、水圧、自重及び地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等の移動により当該施設に作用する力によって損壊、転倒、滑動又は沈下をしない構造であること。
六 対策工事の計画及び対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画において定める高さが二メートルを超える擁壁については、建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百四十二条同令第七章の八の準用に関する部分を除く。)に定めるところによるものであること。
(重大な土砂災害の急迫した危険が予想される状況)
第八条 法第二十八条第一項の政令で定める状況は、次の各号に掲げる土砂災害の発生原因となる自然現象の区分に応じ、当該各号に定める状況とする。
一 土石流 次のイ又はロに掲げる状況
イ 次の(1)及び(2)に該当する状況
(1) 河道閉塞によるたん水の発生によってたまる水の量が増加すると予想され、かつ、その増加により越流が開始することが予想される地点((2)及び第三号において「越流開始地点」という。)において堆積した土石等の高さがおおむね二十メートル以上であること。
(2) 河道閉塞による湛水が発生した河川のうち越流開始地点より下流の部分に隣接する土地の区域(土石流が発生した場合において、地形の状況により明らかに土石流が到達しないと認められる土地の区域を除く。)に存する居室を有する建築物の数がおおむね十以上であること。
ロ 次の(1)及び(2)に該当する状況
(1) 噴火により、降灰、火砕流として流下した火山灰その他これらに類するものが、山間部における河川のうちその勾配が十度以上である部分の最も下流の地点より上流の部分の流域のおおむね五割以上の面積を占める区域の土地において、一センチメートル以上の高さで堆積していると推計されること。
(2) 山間部における河川のうちその勾配が十度以上である部分の最も下流の地点より下流の部分に隣接する土地の区域(土石流が発生した場合において、地形の状況により明らかに土石流が到達しないと認められる土地の区域を除く。)に存する居室を有する建築物の数がおおむね十以上であること。
二 地滑り 地滑りにより、地割れ若しくは建築物の外壁の亀裂が生じ、又はそれらの幅が広がりつつあり、かつ、当該地滑りに係る第二条第三号イ又はロに掲げる区域に存する居室を有する建築物の数がおおむね十以上である状況
三 河道閉塞による湛水 第一号イ(1)に該当し、かつ、河道閉塞による湛水が発生した河川の越流開始地点より上流の部分の流域のうち越流開始地点の標高以下の標高の土地の区域に存する居室を有する建築物の数がおおむね十以上である状況
(緊急調査を行うために特に高度な専門的知識及び技術を要する自然現象)
第九条 法第二十九条第一項の政令で定める自然現象は、土石流及び河道閉塞による湛水とする。
(費用の補助)
第十条 法第三十三条の規定による国の都道府県に対する補助金の額は、基礎調査に要する費用の額に三分の一を乗じて得た額とする。
(緊急時の指示)
第十一条 法第三十五条の政令で定める事務は、法第七条第一項及び第三項から第五項まで、第九条第一項及び第三項から第五項まで並びに第二十六条第一項に規定する事務とする。
附 則 抄
(施行期日)
第一条 この政令は、法の施行の日(平成十三年四月一日)から施行する。
附 則 (平成一八年九月二六日政令第三二〇号)
この政令は、障害者自立支援法の一部の施行の日(平成十八年十月一日)から施行する。
附 則 (平成一九年三月二二日政令第五五号) 抄
(施行期日)
第一条 この政令は、平成十九年四月一日から施行する。
(罰則の適用に関する経過措置)
第三条 この政令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附 則 (平成二三年一月二八日政令第一〇号) 抄
(施行期日)
1 この政令は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行の日(平成二十三年五月一日)から施行する。
附 則 (平成二四年二月三日政令第二六号) 抄
(施行期日)
第一条 この政令は、平成二十四年四月一日から施行する。
附 則 (平成二六年九月二五日政令第三一三号) 抄
(施行期日)
1 この政令は、平成二十六年十月一日から施行する。
附 則 (平成二七年一月一五日政令第六号)
この政令は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行の日(平成二十七年一月十八日)から施行する。
附 則 (平成二九年三月二九日政令第六三号)
(施行期日)
第一条 この政令は、平成二十九年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 この政令の施行の日前に設置された第六条第一号の規定による改正前の辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律施行令第二条第九号に掲げる母子健康センター(以下この条において「母子健康センター」という。)及び同日前に辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(昭和三十七年法律第八十八号)第三条第二項の規定により同条第一項に規定する総合整備計画に定められた母子健康センターであって同日以後に設置されるものについては、第六条第一号の規定による改正後の辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律施行令第二条第九号に掲げる母子健康包括支援センターとみなす。
第三条 この政令の施行の日前に設置された第六条第三号の規定による改正前の過疎地域自立促進特別措置法施行令第六条第六項第九号に掲げる母子健康センター(以下この条において「母子健康センター」という。)及び同日前に過疎地域自立促進特別措置法(平成十二年法律第十五号)第六条第二項の規定により同条第一項に規定する市町村計画に定められた母子健康センターであって同日以後に設置されるものについては、第六条第三号の規定による改正後の過疎地域自立促進特別措置法施行令第六条第六項第九号に掲げる母子健康包括支援センターとみなす。
第四条 この政令の施行の日前に地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法(平成十七年法律第七十九号)第六条第六項の規定により同条第一項に規定する地域住宅計画に記載された公営住宅建替事業であって、当該公営住宅建替事業が施行される土地の区域において新たに第六条第五号の規定による改正前の地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法施行令第二条第五号に掲げる母子健康センターを整備するものについては、同日において当該地域住宅計画に記載された公営住宅建替事業であって、当該公営住宅建替事業が施行される土地の区域において新たに第六条第五号の規定による改正後の地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法施行令第二条第五号に掲げる母子健康包括支援センターを整備するものとみなす。
第五条 第九条の規定による改正後の子ども・子育て支援法施行令第四条第一項第四号及び第二項第八号並びに第十四条の規定は、この政令の施行の日以後に行われる子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第二十七条第一項に規定する特定教育・保育、同法第二十八条第一項第二号に規定する特別利用保育、同項第三号に規定する特別利用教育、同法第二十九条第一項に規定する特定地域型保育、同法第三十条第一項第二号に規定する特別利用地域型保育、同項第三号に規定する特定利用地域型保育及び同項第四号に規定する特例保育(以下この条において「特定教育・保育等」という。)について適用し、同日前に行われた特定教育・保育等については、なお従前の例による。