関連法規 

  文化財保護法 


○この法律の施行令、施行規則等を含むリンク先(電子政府)は コチラ

*第3章~第5章、第8章~第11章、第12章第一節~第二節、附則は省略しています。
*赤字等はサイト管理者

昭和二十五年法律第二百十四号
文化財保護法
目次
附則

第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。
(文化財の定義)
第二条 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
一 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
二 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
三 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
四 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋りよう、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
五 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
六 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)
2 この法律の規定(第二十七条から第二十九条まで、第三十七条、第五十五条第一項第四号、第百五十三条第一項第一号、第百六十五条、第百七十一条及び附則第三条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3 この法律の規定(第百九条、第百十条、第百十二条、第百二十二条、第百三十一条第一項第四号、第百五十三条第一項第七号及び第八号、第百六十五条並びに第百七十一条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。
(政府及び地方公共団体の任務)
第三条 政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。
(国民、所有者等の心構)
第四条 一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力しなければならない。
2 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
3 政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。
第二章 削除
第五条から第二十六条まで 削除
第三章~第五章
(省略)
第六章 埋蔵文化財
(調査のための発掘に関する届出、指示及び命令)
第九十二条 土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の三十日前までに文化庁長官に届け出なければならない。ただし、文部科学省令の定める場合は、この限りでない。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る発掘に関し必要な事項及び報告書の提出を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。
(土木工事等のための発掘に関する届出及び指示)
第九十三条 土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)を発掘しようとする場合には、前条第一項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日前」とあるのは、「六十日前」と読み替えるものとする。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項で準用する前条第一項の届出に係る発掘に関し、当該発掘前における埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査の実施その他の必要な事項を指示することができる。
(国の機関等が行う発掘に関する特例)
第九十四条 国の機関、地方公共団体又は国若しくは地方公共団体の設立に係る法人で政令の定めるもの(以下この条及び第九十七条において「国の機関等」と総称する。)が、前条第一項に規定する目的で周知の埋蔵文化財包蔵地を発掘しようとする場合においては、同条の規定を適用しないものとし、当該国の機関等は、当該発掘に係る事業計画の策定に当たつて、あらかじめ、文化庁長官にその旨を通知しなければならない。
2 文化庁長官は、前項の通知を受けた場合において、埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、当該国の機関等に対し、当該事業計画の策定及びその実施について協議を求めるべき旨の通知をすることができる。
3 前項の通知を受けた国の機関等は、当該事業計画の策定及びその実施について、文化庁長官に協議しなければならない。
4 文化庁長官は、前二項の場合を除き、第一項の通知があつた場合において、当該通知に係る事業計画の実施に関し、埋蔵文化財の保護上必要な勧告をすることができる。
5 前各項の場合において、当該国の機関等が各省各庁の長(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第四条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)であるときは、これらの規定に規定する通知、協議又は勧告は、文部科学大臣を通じて行うものとする。
(埋蔵文化財包蔵地の周知)
第九十五条 国及び地方公共団体は、周知の埋蔵文化財包蔵地について、資料の整備その他その周知の徹底を図るために必要な措置の実施に努めなければならない。
2 国は、地方公共団体が行う前項の措置に関し、指導、助言その他の必要と認められる援助をすることができる。
(遺跡の発見に関する届出、停止命令等)
第九十六条 土地の所有者又は占有者が出土品の出土等により貝づか、住居跡、古墳その他遺跡と認められるものを発見したときは、第九十二条第一項の規定による調査に当たつて発見した場合を除き、その現状を変更することなく、遅滞なく、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、その旨を文化庁長官に届け出なければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置を執る場合は、その限度において、その現状を変更することを妨げない。
2 文化庁長官は、前項の届出があつた場合において、当該届出に係る遺跡が重要なものであり、かつ、その保護のため調査を行う必要があると認めるときは、その土地の所有者又は占有者に対し、期間及び区域を定めて、その現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止を命ずることができる。ただし、その期間は、三月を超えることができない。
3 文化庁長官は、前項の命令をしようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の意見を聴かなければならない。
4 第二項の命令は、第一項の届出があつた日から起算して一月以内にしなければならない。
5 第二項の場合において、同項の期間内に調査が完了せず、引き続き調査を行う必要があるときは、文化庁長官は、一回に限り、当該命令に係る区域の全部又は一部について、その期間を延長することができる。ただし、当該命令の期間が、同項の期間と通算して六月を超えることとなつてはならない。
6 第二項及び前項の期間を計算する場合においては、第一項の届出があつた日から起算して第二項の命令を発した日までの期間が含まれるものとする。
7 文化庁長官は、第一項の届出がなされなかつた場合においても、第二項及び第五項に規定する措置を執ることができる。
8 文化庁長官は、第二項の措置を執つた場合を除き、第一項の届出がなされた場合には、当該遺跡の保護上必要な指示をすることができる。前項の規定により第二項の措置を執つた場合を除き、第一項の届出がなされなかつたときも、同様とする。
9 第二項の命令によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
10 前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
(国の機関等の遺跡の発見に関する特例)
第九十七条 国の機関等が前条第一項に規定する発見をしたときは、同条の規定を適用しないものとし、第九十二条第一項又は第九十九条第一項の規定による調査に当たつて発見した場合を除き、その現状を変更することなく、遅滞なく、その旨を文化庁長官に通知しなければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置を執る場合は、その限度において、その現状を変更することを妨げない。
2 文化庁長官は、前項の通知を受けた場合において、当該通知に係る遺跡が重要なものであり、かつ、その保護のため調査を行う必要があると認めるときは、当該国の機関等に対し、その調査、保存等について協議を求めるべき旨の通知をすることができる。
3 前項の通知を受けた国の機関等は、文化庁長官に協議しなければならない。
4 文化庁長官は、前二項の場合を除き、第一項の通知があつた場合において、当該遺跡の保護上必要な勧告をすることができる。
5 前各項の場合には、第九十四条第五項の規定を準用する。
(文化庁長官による発掘の施行)
第九十八条 文化庁長官は、歴史上又は学術上の価値が特に高く、かつ、その調査が技術的に困難なため国において調査する必要があると認められる埋蔵文化財については、その調査のため土地の発掘を施行することができる。
2 前項の規定により発掘を施行しようとするときは、文化庁長官は、あらかじめ、当該土地の所有者及び権原に基づく占有者に対し、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項を記載した令書を交付しなければならない。
3 第一項の場合には、第三十九条(同条第三項において準用する第三十二条の二第五項の規定を含む。)及び第四十一条の規定を準用する。
(地方公共団体による発掘の施行)
第九十九条 地方公共団体は、文化庁長官が前条第一項の規定により発掘を施行するものを除き、埋蔵文化財について調査する必要があると認めるときは、埋蔵文化財を包蔵すると認められる土地の発掘を施行することができる。
2 地方公共団体は、前項の発掘に関し、事業者に対し協力を求めることができる。
3 文化庁長官は、地方公共団体に対し、第一項の発掘に関し必要な指導及び助言をすることができる。
4 国は、地方公共団体に対し、第一項の発掘に要する経費の一部を補助することができる。
(返還又は通知等)
第百条 第九十八条第一項の規定による発掘により文化財を発見した場合において、文化庁長官は、当該文化財の所有者が判明しているときはこれを所有者に返還し、所有者が判明しないときは、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)第四条第一項の規定にかかわらず、警察署長にその旨を通知することをもつて足りる。
2 前項の規定は、前条第一項の規定による発掘により都道府県又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)若しくは同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の教育委員会が文化財を発見した場合における当該教育委員会について準用する。
3 第一項(前項において準用する場合を含む。)の通知を受けたときは、警察署長は、直ちに当該文化財につき遺失物法第七条第一項の規定による公告をしなければならない。
(提出)
第百一条 遺失物法第四条第一項の規定により、埋蔵物として提出された物件が文化財と認められるときは、警察署長は、直ちに当該物件を当該物件の発見された土地を管轄する都道府県の教育委員会(当該土地が指定都市等の区域内に存する場合にあつては、当該指定都市等の教育委員会。次条において同じ。)に提出しなければならない。ただし、所有者の判明している場合は、この限りでない。
(鑑査)
第百二条 前条の規定により物件が提出されたときは、都道府県の教育委員会は、当該物件が文化財であるかどうかを鑑査しなければならない。
2 都道府県の教育委員会は、前項の鑑査の結果当該物件を文化財と認めたときは、その旨を警察署長に通知し、文化財でないと認めたときは、当該物件を警察署長に差し戻さなければならない。
(引渡し)
第百三条 第百条第一項に規定する文化財又は同条第二項若しくは前条第二項に規定する文化財の所有者から、警察署長に対し、その文化財の返還の請求があつたときは、文化庁長官又は都道府県若しくは指定都市等の教育委員会は、当該警察署長にこれを引き渡さなければならない。
(国庫帰属及び報償金)
第百四条 第百条第一項に規定する文化財又は第百二条第二項に規定する文化財(国の機関又は独立行政法人国立文化財機構が埋蔵文化財の調査のための土地の発掘により発見したものに限る。)で、その所有者が判明しないものの所有権は、国庫に帰属する。この場合においては、文化庁長官は、当該文化財の発見された土地の所有者にその旨を通知し、かつ、その価格の二分の一に相当する額の報償金を支給する。
2 前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
(都道府県帰属及び報償金)
第百五条 第百条第二項に規定する文化財又は第百二条第二項に規定する文化財(前条第一項に規定するものを除く。)で、その所有者が判明しないものの所有権は、当該文化財の発見された土地を管轄する都道府県に帰属する。この場合においては、当該都道府県の教育委員会は、当該文化財の発見者及びその発見された土地の所有者にその旨を通知し、かつ、その価格に相当する額の報償金を支給する。
2 前項に規定する発見者と土地所有者とが異なるときは、前項の報償金は、折半して支給する。
3 第一項の報償金の額は、当該都道府県の教育委員会が決定する。
4 前項の規定による報償金の額については、第四十一条第三項の規定を準用する。
5 前項において準用する第四十一条第三項の規定による訴えにおいては、都道府県を被告とする。
(譲与等)
第百六条 政府は、第百四条第一項の規定により国庫に帰属した文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、当該文化財の発見された土地の所有者に、その者が同条の規定により受けるべき報償金の額に相当するものの範囲内でこれを譲与することができる。
2 前項の場合には、その譲与した文化財の価格に相当する金額は、第百四条に規定する報償金の額から控除するものとする。
3 政府は、第百四条第一項の規定により国庫に帰属した文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、独立行政法人国立文化財機構又は当該文化財の発見された土地を管轄する地方公共団体に対し、その申請に基づき、当該文化財を譲与し、又は時価よりも低い対価で譲渡することができる。
第百七条 都道府県の教育委員会は、第百五条第一項の規定により当該都道府県に帰属した文化財の保存のため又はその効用から見て当該都道府県が保有する必要がある場合を除いて、当該文化財の発見者又はその発見された土地の所有者に、その者が同条の規定により受けるベき報償金の額に相当するものの範囲内でこれを譲与することができる。
2 前項の場合には、その譲与した文化財の価格に相当する金額は、第百五条に規定する報償金の額から控除するものとする。
(遺失物法の適用)
第百八条 埋蔵文化財に関しては、この法律に特別の定めのある場合のほか、遺失物法の適用があるものとする。
第七章 史跡名勝天然記念物
(指定)
第百九条 文部科学大臣は、記念物のうち重要なものを史跡、名勝又は天然記念物(以下「史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる。
2 文部科学大臣は、前項の規定により指定された史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物(以下「特別史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる。
3 前二項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所有者及び権原に基づく占有者に通知してする。
4 前項の規定により通知すべき相手方が著しく多数で個別に通知し難い事情がある場合には、文部科学大臣は、同項の規定による通知に代えて、その通知すべき事項を当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所在地の市(特別区を含む。以下同じ。)町村の事務所又はこれに準ずる施設の掲示場に掲示することができる。この場合においては、その掲示を始めた日から二週間を経過した時に前項の規定による通知が相手方に到達したものとみなす。
5 第一項又は第二項の規定による指定は、第三項の規定による官報の告示があつた日からその効力を生ずる。ただし、当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所有者又は権原に基づく占有者に対しては、第三項の規定による通知が到達した時又は前項の規定によりその通知が到達したものとみなされる時からその効力を生ずる。
6 文部科学大臣は、第一項の規定により名勝又は天然記念物の指定をしようとする場合において、その指定に係る記念物が自然環境の保護の見地から価値の高いものであるときは、環境大臣と協議しなければならない。
(仮指定)
第百十条 前条第一項の規定による指定前において緊急の必要があると認めるときは、都道府県の教育委員会(当該記念物が指定都市の区域内に存する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会。第百三十三条を除き、以下この章において同じ。)は、史跡名勝天然記念物の仮指定を行うことができる。
2 前項の規定により仮指定を行つたときは、都道府県の教育委員会は、直ちにその旨を文部科学大臣に報告しなければならない。
3 第一項の規定による仮指定には、前条第三項から第五項までの規定を準用する。
(所有権等の尊重及び他の公益との調整)
第百十一条 文部科学大臣又は都道府県の教育委員会は、第百九条第一項若しくは第二項の規定による指定又は前条第一項の規定による仮指定を行うに当たつては、特に、関係者の所有権、鉱業権その他の財産権を尊重するとともに、国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。
2 文部科学大臣又は文化庁長官は、名勝又は天然記念物に係る自然環境の保護及び整備に関し必要があると認めるときは、環境大臣に対し、意見を述べることができる。この場合において、文化庁長官が意見を述べるときは、文部科学大臣を通じて行うものとする。
3 環境大臣は、自然環境の保護の見地から価値の高い名勝又は天然記念物の保存及び活用に関し必要があると認めるときは、文部科学大臣に対し、又は文部科学大臣を通じ文化庁長官に対して意見を述べることができる。
(解除)
第百十二条 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物がその価値を失つた場合その他特殊の事由のあるときは、文部科学大臣又は都道府県の教育委員会は、その指定又は仮指定を解除することができる。
2 第百十条第一項の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物につき第百九条第一項の規定による指定があつたとき、又は仮指定があつた日から二年以内に同項の規定による指定がなかつたときは、仮指定は、その効力を失う。
3 第百十条第一項の規定による仮指定が適当でないと認めるときは、文部科学大臣は、これを解除することができる。
4 第一項又は前項の規定による指定又は仮指定の解除には、第百九条第三項から第五項までの規定を準用する。
(管理団体による管理及び復旧)
第百十三条 史跡名勝天然記念物につき、所有者がないか若しくは判明しない場合又は所有者若しくは第百十九条第二項の規定により選任された管理の責めに任ずべき者による管理が著しく困難若しくは不適当であると明らかに認められる場合には、文化庁長官は、適当な地方公共団体その他の法人を指定して、当該史跡名勝天然記念物の保存のため必要な管理及び復旧(当該史跡名勝天然記念物の保存のため必要な施設、設備その他の物件で当該史跡名勝天然記念物の所有者の所有又は管理に属するものの管理及び復旧を含む。)を行わせることができる。
2 前項の規定による指定をするには、文化庁長官は、あらかじめ、指定しようとする地方公共団体その他の法人の同意を得なければならない。
3 第一項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該史跡名勝天然記念物の所有者及び権原に基づく占有者並びに指定しようとする地方公共団体その他の法人に通知してする。
4 第一項の規定による指定には、第百九条第四項及び第五項の規定を準用する。
第百十四条 前条第一項に規定する事由が消滅した場合その他特殊の事由があるときは、文化庁長官は、管理団体の指定を解除することができる。
2 前項の規定による解除には、前条第三項並びに第百九条第四項及び第五項の規定を準用する。
第百十五条 第百十三条第一項の規定による指定を受けた地方公共団体その他の法人(以下この章及び第十二章において「管理団体」という。)は、文部科学省令の定める基準により、史跡名勝天然記念物の管理に必要な標識、説明板、境界標、囲いその他の施設を設置しなければならない。
2 史跡名勝天然記念物の指定地域内の土地について、その土地の所在、地番、地目又は地積に異動があつたときは、管理団体は、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。
3 管理団体が復旧を行う場合は、管理団体は、あらかじめ、その復旧の方法及び時期について当該史跡名勝天然記念物の所有者(所有者が判明しない場合を除く。)及び権原に基づく占有者の意見を聞かなければならない。
4 史跡名勝天然記念物の所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、管理団体が行う管理若しくは復旧又はその管理若しくは復旧のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。
第百十六条 管理団体が行う管理及び復旧に要する費用は、この法律に特別の定めのある場合を除いて、管理団体の負担とする。
2 前項の規定は、管理団体と所有者との協議により、管理団体が行う管理又は復旧により所有者の受ける利益の限度において、管理又は復旧に要する費用の一部を所有者の負担とすることを妨げるものではない。
3 管理団体は、その管理する史跡名勝天然記念物につき観覧料を徴収することができる。
第百十七条 管理団体が行う管理又は復旧によつて損失を受けた者に対しては、当該管理団体は、その通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 前項の補償の額は、管理団体(管理団体が地方公共団体であるときは、当該地方公共団体の教育委員会)が決定する。
3 前項の規定による補償額については、第四十一条第三項の規定を準用する。
4 前項で準用する第四十一条第三項の規定による訴えにおいては、管理団体を被告とする。
第百十八条 管理団体が行う管理には、第三十条、第三十一条第一項及び第三十三条の規定を、管理団体が行う管理及び復旧には、第三十五条及び第四十七条の規定を、管理団体が指定され、又はその指定が解除された場合には、第五十六条第三項の規定を準用する。
(所有者による管理及び復旧)
第百十九条 管理団体がある場合を除いて、史跡名勝天然記念物の所有者は、当該史跡名勝天然記念物の管理及び復旧に当たるものとする。
2 前項の規定により史跡名勝天然記念物の管理に当たる所有者は、特別の事情があるときは、適当な者を専ら自己に代わり当該史跡名勝天然記念物の管理の責めに任ずべき者(以下この章及び第十二章において「管理責任者」という。)に選任することができる。この場合には、第三十一条第三項の規定を準用する。
第百二十条 所有者が行う管理には、第三十条、第三十一条第一項、第三十二条、第三十三条並びに第百十五条第一項及び第二項(同条第二項については、管理責任者がある場合を除く。)の規定を、所有者が行う管理及び復旧には、第三十五条及び第四十七条の規定を、所有者が変更した場合の権利義務の承継には、第五十六条第一項の規定を、管理責任者が行う管理には、第三十条、第三十一条第一項、第三十二条第三項、第三十三条、第四十七条第四項及び第百十五条第二項の規定を準用する。
(管理に関する命令又は勧告)
第百二十一条 管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、文化庁長官は、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の場合には、第三十六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(復旧に関する命令又は勧告)
第百二十二条 文化庁長官は、特別史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理団体又は所有者に対し、その復旧について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 文化庁長官は、特別史跡名勝天然記念物以外の史跡名勝天然記念物が、き損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理団体又は所有者に対し、その復旧について必要な勧告をすることができる。
3 前二項の場合には、第三十七条第三項及び第四項の規定を準用する。
(文化庁長官による特別史跡名勝天然記念物の復旧等の施行)
第百二十三条 文化庁長官は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、特別史跡名勝天然記念物につき自ら復旧を行い、又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置をすることができる。
一 管理団体、所有者又は管理責任者が前二条の規定による命令に従わないとき。
二 特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、衰亡し、若しくは盗み取られるおそれのある場合において、管理団体、所有者又は管理責任者に復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の場合には、第三十八条第二項及び第三十九条から第四十一条までの規定を準用する。
(補助等に係る史跡名勝天然記念物譲渡の場合の納付金)
第百二十四条 国が復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置につき第百十八条及び第百二十条で準用する第三十五条第一項の規定により補助金を交付し、又は第百二十一条第二項で準用する第三十六条第二項、第百二十二条第三項で準用する第三十七条第三項若しくは前条第二項で準用する第四十条第一項の規定により費用を負担した史跡名勝天然記念物については、第四十二条の規定を準用する。
(現状変更等の制限及び原状回復の命令)
第百二十五条 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。
2 前項ただし書に規定する維持の措置の範囲は、文部科学省令で定める。
3 第一項の規定による許可を与える場合には、第四十三条第三項の規定を、第一項の規定による許可を受けた者には、同条第四項の規定を準用する。
4 第一項の規定による処分には、第百十一条第一項の規定を準用する。
5 第一項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第三項で準用する第四十三条第三項の許可の条件を付せられたことによつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
6 前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
7 第一項の規定による許可を受けず、又は第三項で準用する第四十三条第三項の規定による許可の条件に従わないで、史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をした者に対しては、文化庁長官は、原状回復を命ずることができる。この場合には、文化庁長官は、原状回復に関し必要な指示をすることができる。
(関係行政庁による通知)
第百二十六条 前条第一項の規定により許可を受けなければならないこととされている行為であつてその行為をするについて、他の法令の規定により許可、認可その他の処分で政令に定めるものを受けなければならないこととされている場合において、当該他の法令において当該処分の権限を有する行政庁又はその委任を受けた者は、当該処分をするときは、政令の定めるところにより、文化庁長官(第百八十四条第一項の規定により前条第一項の規定による許可を都道府県又は市の教育委員会が行う場合には、当該都道府県又は市の教育委員会)に対し、その旨を通知するものとする。
(復旧の届出等)
第百二十七条 史跡名勝天然記念物を復旧しようとするときは、管理団体又は所有者は、復旧に着手しようとする日の三十日前までに、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。ただし、第百二十五条第一項の規定により許可を受けなければならない場合その他文部科学省令の定める場合は、この限りでない。
2 史跡名勝天然記念物の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る史跡名勝天然記念物の復旧に関し技術的な指導と助言を与えることができる。
(環境保全)
第百二十八条 文化庁長官は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
3 第一項の規定による制限又は禁止に違反した者には、第百二十五条第七項の規定を、前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
(管理団体による買取りの補助)
第百二十九条 管理団体である地方公共団体その他の法人が、史跡名勝天然記念物の指定に係る土地又は建造物その他の土地の定着物で、その管理に係る史跡名勝天然記念物の保存のため特に買い取る必要があると認められるものを買い取る場合には、国は、その買取りに要する経費の一部を補助することができる。
2 前項の場合には、第三十五条第二項及び第三項並びに第四十二条の規定を準用する。
(保存のための調査)
第百三十条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、史跡名勝天然記念物の現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第百三十一条 文化庁長官は、次の各号のいずれかに該当する場合において、前条の報告によつてもなお史跡名勝天然記念物に関する状況を確認することができず、かつ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当たる者を定め、その所在する土地又はその隣接地に立ち入つてその現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき実地調査及び土地の発掘、障害物の除却その他調査のため必要な措置をさせることができる。ただし、当該土地の所有者、占有者その他の関係者に対し、著しい損害を及ぼすおそれのある措置は、させてはならない。
一 史跡名勝天然記念物に関する現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可の申請があつたとき。
二 史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡しているとき。
三 史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるおそれのあるとき。
四 特別の事情によりあらためて特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物としての価値を調査する必要があるとき。
2 前項の規定による調査又は措置によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
3 第一項の規定により立ち入り、調査する場合には、第五十五条第二項の規定を、前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
(登録記念物)
第百三十二条 文部科学大臣は、史跡名勝天然記念物(第百十条第一項に規定する仮指定を都道府県の教育委員会が行つたものを含む。)以外の記念物(第百八十二条第二項に規定する指定を地方公共団体が行つているものを除く。)のうち、その文化財としての価値にかんがみ保存及び活用のための措置が特に必要とされるものを文化財登録原簿に登録することができる。
2 前項の規定による登録には、第五十七条第二項及び第三項、第百九条第三項から第五項まで並びに第百十一条第一項の規定を準用する。
第百三十三条 前条の規定により登録された記念物(以下「登録記念物」という。)については、第五十九条第一項から第五項まで、第六十四条、第六十八条、第百十一条第二項及び第三項並びに第百十三条から第百二十条までの規定を準用する。この場合において、第五十九条第一項中「第二十七条第一項の規定により重要文化財に指定したとき」とあるのは「第百九条第一項の規定により史跡名勝天然記念物に指定したとき(第百十条第一項に規定する仮指定を都道府県の教育委員会(当該記念物が指定都市の区域内に存する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会)が行つたときを含む。)」と、同条第四項中「所有者に通知する」とあるのは「所有者及び権原に基づく占有者に通知する。ただし、通知すべき相手方が著しく多数で個別に通知し難い事情がある場合には、文部科学大臣は、当該通知に代えて、その通知すべき事項を当該登録記念物の所在地の市町村の事務所又はこれに準ずる施設の掲示場に掲示することができる。この場合においては、その掲示を始めた日から二週間を経過した時に当該通知が相手方に到達したものとみなす」と、同条第五項中「抹消には、前条第二項の規定を準用する」とあるのは「抹消は、前項の規定による官報の告示があつた日からその効力を生ずる。ただし、当該登録記念物の所有者又は権原に基づく占有者に対しては、前項の規定による通知が到達した時又は同項の規定によりその通知が到達したものとみなされる時からその効力を生ずる」と、第百十三条第一項中「不適当であると明らかに認められる場合には」とあるのは「不適当であることが明らかである旨の関係地方公共団体の申出があつた場合には、関係地方公共団体の意見を聴いて」と、第百十八条及び第百二十条中「第三十条、第三十一条第一項」とあるのは「第三十一条第一項」と、「準用する」とあるのは「準用する。この場合において、第三十一条第一項中「並びにこれに基いて発する文部科学省令及び文化庁長官の指示に従い」とあるのは「及びこれに基づく文部科学省令に従い」と読み替えるものとする」と、第百十八条中「第三十五条及び第四十七条の規定を、管理団体が指定され、又はその指定が解除された場合には、第五十六条第三項」とあるのは「第四十七条第四項」と、第百二十条中「第三十五条及び第四十七条の規定を、所有者が変更した場合の権利義務の承継には、第五十六条第一項」とあるのは「第四十七条第四項」と読み替えるものとする。
第十二章 補則
第一節、第二節 (省略)
第三節 地方公共団体及び教育委員会
(地方公共団体の事務)
第百八十二条 地方公共団体は、文化財の管理、修理、復旧、公開その他その保存及び活用に要する経費につき補助することができる。
2 地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財、重要無形文化財、重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。
3 前項に規定する条例の制定若しくはその改廃又は同項に規定する文化財の指定若しくはその解除を行つた場合には、教育委員会は、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を報告しなければならない。
(地方債についての配慮)
第百八十三条 地方公共団体が文化財の保存及び活用を図るために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、適切な配慮をするものとする。
(都道府県又は市の教育委員会が処理する事務)
第百八十四条 次に掲げる文化庁長官の権限に属する事務の全部又は一部は、政令で定めるところにより、都道府県又は市の教育委員会が行うこととすることができる。
一 第三十五条第三項(第三十六条第三項(第八十三条、第百二十一条第二項(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第三十七条第四項(第八十三条及び第百二十二条第三項で準用する場合を含む。)、第四十六条の二第二項、第七十四条第二項、第七十七条第二項(第九十一条で準用する場合を含む。)、第八十三条、第八十七条第二項、第百十八条、第百二十条、第百二十九条第二項、第百七十二条第五項及び第百七十四条第三項で準用する場合を含む。)の規定による指揮監督
二 第四十三条又は第百二十五条の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可及びその取消し並びにその停止命令(重大な現状変更又は保存に重大な影響を及ぼす行為の許可及びその取消しを除く。)
三 第五十一条第五項(第五十一条の二(第八十五条で準用する場合を含む。)、第八十四条第二項及び第八十五条で準用する場合を含む。)の規定による公開の停止命令
四 第五十三条第一項、第三項及び第四項の規定による公開の許可及びその取消し並びに公開の停止命令
五 第五十四条(第八十六条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第五十五条、第百三十条(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)又は第百三十一条の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第九十二条第一項(第九十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による届出の受理、第九十二条第二項の規定による指示及び命令、第九十三条第二項の規定による指示、第九十四条第一項の規定による通知の受理、同条第二項の規定による通知、同条第三項の規定による協議、同条第四項の規定による勧告、第九十六条第一項の規定による届出の受理、同条第二項又は第七項の規定による命令、同条第三項の規定による意見の聴取、同条第五項又は第七項の規定による期間の延長、同条第八項の規定による指示、第九十七条第一項の規定による通知の受理、同条第二項の規定による通知、同条第三項の規定による協議並びに同条第四項の規定による勧告
2 都道府県又は市の教育委員会が前項の規定によつてした同項第五号に掲げる第五十五条又は第百三十一条の規定による立入調査又は調査のための必要な措置の施行については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
3 都道府県又は市の教育委員会が、第一項の規定により、同項第六号に掲げる事務のうち第九十四条第一項から第四項まで又は第九十七条第一項から第四項までの規定によるものを行う場合には、第九十四条第五項又は第九十七条第五項の規定は適用しない。
4 都道府県又は市の教育委員会が第一項の規定によつてした次の各号に掲げる事務(当該事務が地方自治法第二条第八項に規定する自治事務である場合に限る。)により損失を受けた者に対しては、当該各号に定める規定にかかわらず、当該都道府県又は市が、その通常生ずべき損失を補償する。
一 第一項第二号に掲げる第四十三条又は第百二十五条の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可 第四十三条第五項又は第百二十五条第五項
二 第一項第五号に掲げる第五十五条又は第百三十一条の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行 第五十五条第三項又は第百三十一条第二項
三 第一項第六号に掲げる第九十六条第二項の規定による命令 同条第九項
5 前項の補償の額は、当該都道府県又は市の教育委員会が決定する。
6 前項の規定による補償額については、第四十一条第三項の規定を準用する。
7 前項において準用する第四十一条第三項の規定による訴えにおいては、都道府県又は市を被告とする。
8 都道府県又は市の教育委員会が第一項の規定によつてした処分その他公権力の行使に当たる行為のうち地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務に係るものについての審査請求は、文化庁長官に対してするものとする。
(出品された重要文化財等の管理)
第百八十五条 文化庁長官は、政令で定めるところにより、第四十八条(第八十五条で準用する場合を含む。)の規定により出品された重要文化財又は重要有形民俗文化財の管理の事務の全部又は一部を、都道府県又は指定都市等の教育委員会が行うこととすることができる。
2 前項の規定により、都道府県又は指定都市等の教育委員会が同項の管理の事務を行う場合には、都道府県又は指定都市等の教育委員会は、その職員のうちから、当該重要文化財又は重要有形民俗文化財の管理の責めに任ずべき者を定めなければならない。
(修理等の施行の委託)
第百八十六条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、第三十八条第一項又は第百七十条の規定による国宝の修理又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置の施行、第九十八条第一項の規定による発掘の施行及び第百二十三条第一項又は第百七十条の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置の施行につき、都道府県の教育委員会に対し、その全部又は一部を委託することができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委託に基づき、第三十八条第一項の規定による修理又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、第三十九条の規定を、第九十八条第一項の規定による発掘の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第三項で準用する第三十九条の規定を、第百二十三条第一項の規定による復旧又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第二項で準用する第三十九条の規定を準用する。
(重要文化財等の管理等の受託又は技術的指導)
第百八十七条 都道府県又は指定都市の教育委員会は、所有者(管理団体がある場合は、その者)又は管理責任者の求めに応じ、重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の管理(管理団体がある場合を除く。)、修理若しくは復旧につき委託を受け、又は技術的指導をすることができる。
2 都道府県又は指定都市の教育委員会が前項の規定により管理、修理又は復旧の委託を受ける場合には、第三十九条第一項及び第二項の規定を準用する。
(書類等の経由)
第百八十八条 この法律の規定により文化財に関し文部科学大臣又は文化庁長官に提出すべき届書その他の書類及び物件の提出は、都道府県の教育委員会(当該文化財が指定都市の区域内に存する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会。以下この条において同じ。)を経由すべきものとする。
2 都道府県の教育委員会は、前項に規定する書類及び物件を受理したときは、意見を具してこれを文部科学大臣又は文化庁長官に送付しなければならない。
3 この法律の規定により文化財に関し文部科学大臣又は文化庁長官が発する命令、勧告、指示その他の処分の告知は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。ただし、特に緊急な場合は、この限りでない。
(文部科学大臣又は文化庁長官に対する意見具申)
第百八十九条 都道府県及び市町村の教育委員会は、当該都道府県又は市町村の区域内に存する文化財の保存及び活用に関し、文部科学大臣又は文化庁長官に対して意見を具申することができる。
(地方文化財保護審議会)
第百九十条 都道府県及び市町村の教育委員会に、条例の定めるところにより、地方文化財保護審議会を置くことができる。
2 地方文化財保護審議会は、都道府県又は市町村の教育委員会の諮問に応じて、文化財の保存及び活用に関する重要事項について調査審議し、並びにこれらの事項に関して当該都道府県又は市町村の教育委員会に建議する。
3 地方文化財保護審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
(文化財保護指導委員)
第百九十一条 都道府県の教育委員会に、文化財保護指導委員を置くことができる。
2 文化財保護指導委員は、文化財について、随時、巡視を行い、並びに所有者その他の関係者に対し、文化財の保護に関する指導及び助言をするとともに、地域住民に対し、文化財保護思想について普及活動を行うものとする。
3 文化財保護指導委員は、非常勤とする。
(事務の区分)
第百九十二条 第百十条第一項及び第二項、第百十二条第一項並びに第百十条第三項及び第百十二条第四項において準用する第百九条第三項及び第四項の規定により都道府県又は指定都市が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
第十三章 罰則
第百九十三条 第四十四条の規定に違反し、文化庁長官の許可を受けないで重要文化財を輸出した者は、五年以下の懲役若しくは禁又は百万円以下の罰金に処する。
第百九十四条 第八十二条の規定に違反し、文化庁長官の許可を受けないで重要有形民俗文化財を輸出した者は、三年以下の懲役若しくは禁又は五十万円以下の罰金に処する。
第百九十五条 重要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは禁又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第四十三条又は第百二十五条の規定に違反して、許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで、重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は現状の変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者
二 第九十六条第二項の規定に違反して、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止の命令に従わなかつた者
第百九十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第三十九条第三項(第百八十六条第二項で準用する場合を含む。)で準用する第三十二条の二第五項の規定に違反して、国宝の修理又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
二 第九十八条第三項(第百八十六条第二項で準用する場合を含む。)で準用する第三十九条第三項で準用する第三十二条の二第五項の規定に違反して、発掘の施行を拒み、又は妨げた者
三 第百二十三条第二項(第百八十六条第二項で準用する場合を含む。)で準用する第三十九条第三項で準用する第三十二条の二第五項の規定に違反して、特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
第百九十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産の管理に関して第百九十三条から前条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
第二百条 第三十九条第一項(第四十七条第三項(第八十三条で準用する場合を含む。)、第百二十三条第二項、第百八十六条第二項又は第百八十七条第二項で準用する場合を含む。)、第四十九条(第八十五条で準用する場合を含む。)又は第百八十五条第二項に規定する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の管理、修理又は復旧の施行の責めに任ずべき者が怠慢又は重大な過失によりその管理、修理又は復旧に係る重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物を滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるに至らしめたときは、三十万円以下の過料に処する。
第二百一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて、第三十六条第一項(第八十三条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)又は第三十七条第一項の規定による重要文化財若しくは重要有形民俗文化財の管理又は国宝の修理に関する文化庁長官の命令に従わなかつた者
二 正当な理由がなくて、第百二十一条第一項(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)又は第百二十二条第一項の規定による史跡名勝天然記念物の管理又は特別史跡名勝天然記念物の復旧に関する文化庁長官の命令に従わなかつた者
三 正当な理由がなくて、第百三十七条第二項の規定による重要文化的景観の管理に関する勧告に係る措置を執るべき旨の文化庁長官の命令に従わなかつた者
第二百二条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて、第四十五条第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
二 第四十六条(第八十三条で準用する場合を含む。)の規定に違反して、文化庁長官に国に対する売渡しの申出をせず、若しくは申出をした後第四十六条第五項(第八十三条で準用する場合を含む。)に規定する期間内に、国以外の者に重要文化財又は重要有形民俗文化財を譲り渡し、又は第四十六条第一項(第八十三条で準用する場合を含む。)の規定による売渡しの申出につき、虚偽の事実を申し立てた者
三 第四十八条第四項(第五十一条第三項(第八十五条で準用する場合を含む。)及び第八十五条で準用する場合を含む。)の規定に違反して、出品若しくは公開をせず、又は第五十一条第五項(第五十一条の二(第八十五条で準用する場合を含む。)、第八十四条第二項及び第八十五条で準用する場合を含む。)の規定に違反して、公開の停止若しくは中止の命令に従わなかつた者
四 第五十三条第一項、第三項又は第四項の規定に違反して、許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで重要文化財を公開し、又は公開の停止の命令に従わなかつた者
五 第五十四条(第八十六条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第五十五条、第六十八条(第九十条第三項及び第百三十三条で準用する場合を含む。)、第百三十条(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第百三十一条又は第百四十条の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該公務員の立入調査若しくは調査のための必要な措置の施行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
六 第九十二条第二項の規定に違反して、発掘の禁止、停止又は中止の命令に従わなかつた者
七 正当な理由がなくて、第百二十八条第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
第二百三条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の過料に処する。
一 第二十八条第五項、第二十九条第四項(第七十九条第二項で準用する場合を含む。)、第五十六条第二項(第八十六条で準用する場合を含む。)又は第五十九条第六項若しくは第六十九条(これらの規定を第九十条第三項で準用する場合を含む。)の規定に違反して、重要文化財若しくは重要有形民俗文化財の指定書又は登録有形文化財若しくは登録有形民俗文化財の登録証を文部科学大臣に返付せず、又は新所有者に引き渡さなかつた者
二 第三十一条第三項(第六十条第四項(第九十条第三項で準用する場合を含む。)、第八十条及び第百十九条第二項(第百三十三条で準用する場合を含む。)で準用する場合を含む。)、第三十二条(第六十条第四項(第九十条第三項で準用する場合を含む。)、第八十条及び第百二十条(第百三十三条で準用する場合を含む。)で準用する場合を含む。)、第三十三条(第八十条、第百十八条及び第百二十条(これらの規定を第百三十三条で準用する場合を含む。)並びに第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第三十四条(第八十条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第四十三条の二第一項、第六十一条若しくは第六十二条(これらの規定を第九十条第三項で準用する場合を含む。)、第六十四条第一項(第九十条第三項及び第百三十三条で準用する場合を含む。)、第六十五条第一項(第九十条第三項で準用する場合を含む。)、第七十三条、第八十一条第一項、第八十四条第一項本文、第九十二条第一項、第九十六条第一項、第百十五条第二項(第百二十条、第百三十三条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第百二十七条第一項、第百三十六条又は第百三十九条第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第三十二条の二第五項(第三十四条の三第二項(第八十三条で準用する場合を含む。)、第六十条第四項及び第六十三条第二項(これらの規定を第九十条第三項で準用する場合を含む。)並びに第八十条で準用する場合を含む。)又は第百十五条第四項(第百三十三条で準用する場合を含む。)の規定に違反して、管理、修理若しくは復旧又は管理、修理若しくは復旧のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避した者
附 則
(省略)